PLASMA
郡市区医師会
クライアント/サーバ
Windows
システム概要
医師会の会員および医療機関の名簿管理システムとしてスタートしたこの カスタム App は、医療従事者の手当・委託料の計算から税務手続に関する各種書類作成までを行う統合的な業務システムへと成長してきました。
主に地域医療・福祉の充実など、行政が実施する様々な公益的事業をサポートするために医師会で取り組んでいる多岐に渡る業務の効率化と精度向上に寄与することが、本システム「PLASMA」の使命です。
主な機能
- 会員管理:医師会に所属する会員の基本情報をはじめ、所属する医療機関・学会・委員会や校医担当校などの情報を管理しています。
- 医療機関管理:医療機関の基本情報をはじめ、診療科目や、訪問診療・特定健診の可否などの情報を管理しています。
- その他医療従事者の管理:看護師、介護福祉士、診療放射線技師などの医師会に所属しない医療従事者の情報を管理しています。
- マイナンバー管理:セキュリティの確保に配慮した設計で会員のマイナンバーを厳重に管理しています。情報の漏洩を最大限防止するために、特別な権限を持ったユーザーのみがマイナンバーを閲覧することができます。
- 手当・委託料の支払管理:検診や予防接種などへ従事した者に支払う手当・委託料を計算し、毎月の支払金額や所得税の算出を行います。これらの金額は年間で集計され最終的に源泉徴収票や支払調書の金額として出力されます。
- 各種帳票の出力:支払明細書、支払調書、源泉徴収票などをはじめとした、およそ90種類の帳票を出力することができます。
プロジェクトストーリー
当時の名簿管理業務
我々が相談を頂いた当時、医師会では会員および医療機関の名簿管理を古いバージョンのFileMakerで開発されたシステムで運用していた。
ユーザーは、医師からの入会届などの書面をもとに会員情報・医療機関情報をシステムに登録し、その後、関連する様々なデータを追加・更新していく。
また入力された多くのデータから、都度の目的に合わせたものを検索で抽出し、エクスポートや印刷を行う。
このような運用の概観のヒアリングを皮切りに、各業務の詳細に焦点を当てて担当者にお話しを伺った結果、既存システムの運用において次のような課題を抱えていることが見えてきた。
- 絞り込み検索ができないため、目的の会員を抽出できない
- 複数フィールドにまたがる検索ができない
- 共通アカウントを複数ユーザで利用しており、利用者ごとの操作や表示の切り分けができない
- たくさんの入力項目が画面に配置されており使いづらい
- レイアウトの配色が視認性を低下させている
- マウススクロール時にレコード移動してしまう
- FileMakerデータベースに登録されている医療機関情報を更新してから、その更新をホームページに反映するまでの業務がスムーズに行えていない
- 人と医療機関など、様々な情報の関連付けが機能していない
これらの課題を解決し、最新バージョンのFileMakerプラットフォームへ移行することを最初の目標として、本プロジェクトはスタートした。
名簿管理システムのリプレイス開発
以下の目標を設定し、要件定義・設計・開発を行った。
- システムの使い勝⼿を向上させ各種業務を効率化する
- 検索や出⼒を簡単にできるようにする
- アカウントごとに権限付けをし、データの管理を適切に⾏う
- 明るいレイアウトデザインにする
- 最新バージョンのFileMakerプラットフォームへ移行する
これらを実現するためには、古いバージョンの既存システムの変換・改修ではなく、構造を整備して一からつくりなおした方が適しているという判断のもと、リプレイス開発を選択。
新システムのPLASMAでは使いづらさを改善しつつ、既存システムを使い慣れたユーザーに対して混乱を招くような急な変更とならないように折衷を図りながら、およそ半年で開発を完了し、本番運用を迎えた。
また既存システムへの入力資産を最大限活用して再入力の手間を削減すべく、既存システムからPLASMAへの適切なデータ移行プログラムを実行した。
これによりPLASMAの運用が軌道に乗るまでの準備期間は削減され、ユーザーはこれまで旧システムで入力してきたデータを早々にPLASMA上で利用できることとなった。
支払管理との連動へ
名簿管理の土台が固まると、他の業務でこれを活用する道が開けてくる。その1つが支払管理業務だ。
ここで云う「支払」というのは、例えば、各種検診や予防接種など地域医療・公衆衛生に関する事業や、休日診療並びに救急医療に関する事業などに従事した者への委託料・手当の支払を指す。
当時の運用は、各事業ごとに存在するデータベースへそれぞれの担当ユーザーが入力を行い、最終的に1つの集計用データベースへインポートで集約し、金額の計算および帳票の出力を行うというものだった。銀行口座情報を含む支払先の名簿も前述の名簿管理システムとは別のデータベースとして存在して、支払業務に関わるデータベースファイル数は、合計100以上にのぼっており、システム構成の見直しを迫られていた。また機密性の高い情報でありながら、ほぼ手動でバックアップを行っており、保全性にも課題が見られた。
これらの状況を受け、医師会と我々で協議のもと次の計画を立て、開発を実施した。
- ファイル構成・データ構成を見直す
- 源泉徴収票・支払調書出力処理までのフローを合理化する
- 支払先にあたる名簿の基盤が整備されたため、誰が従事したかという記録は新システム上の名簿と関連付ける
- FileMaker Serverの機能を使って適切なバックアップを行う
- 名簿管理機能と支払管理機能が統合された単一のシステムであるとユーザーが認識できるUIをデザインし、業務ごとに異なるデータベースを利用しなければならないというストレスを解消する
機能追加後の支払管理業務では、自治体から医師会へと届いた各事業への従事者の実績情報を元に、すべての事業の入力の受け皿が用意されたPLASMAへ入力及びインポートを行う。入力した情報をもとに従事者への支払金額や所得税がほぼ自動で計算され、最終的に源泉徴収票や支払調書が出力される。また平成28年分の源泉徴収票から記載が必要となったマイナンバーも、セキュリティに配慮した設計のもと印字されるようになった。
名簿管理システムを基盤にして、関わる多様な情報をPLASMAで一元管理することで、支払手続・税務手続の効率化を実現した。