プロジェクトストーリー
株式会社日本複素環化学研究所では、1973年に学術誌「HETEROCYCLES」(ヘテロサイクルズ)を創刊。研究者から投稿された学術論文を受付、その論文の審査やレフェリー(監修者)とのやり取り、編集作業や版下の制作などをこなさなくてはならない。コンピュータの普及と共に学術論文をコンピュータで管理・出版する取り組みがなされ、Macintoshに搭載されていたHyperCardを使用するなど時代の変遷を経て、最終的にFileMakerが使用されることになる。
決して不得手では無いFileMakerで社内で自力で開発し管理を続けてきたが、Webの進化の背景と顧客のニーズに合わせてこれまで以上に紙出版、電子出版をよりスムーズに効率的に管理し、即時Webで公開し快適な利用をエンドユーザに提供する必要に差し迫っていた。
それまでの運用
FileMaker Pro 6 / FileMaker Server 5.5 にてシステム構築され、CDMLによるWeb公開がされていた。Web公開では学術論文の構造式の画像表示、論文PDFのダウンロードの機能があり、さらには会員以外は課金によりダウンロード可能というもの。
学術論文を管理するためのデータベースと、Web公開するためのデータベースはそれぞれ別のファイルとなっており、管理データベースは年ごとに1ファイルあり、年度更新ごとにファイルを複製しデータを削除、ファイル名の変更等を行っていた。
Web公開用は公開に必要なデータを管理データベースからインポートしているが、画像ファイルはオブジェクトフィールドに保存しているため、ファイルサイズが肥大化して行くデメリットがある。PDFについては特定のフォルダに保存しておき、ダウンロードのリクエストがあるとWebサーバの公開領域にPDFをコピーしダウンロード可能としていた。
要改善点
- 学術論文管理のデータベースファイルは年毎に存在。今年のファイルを複製し次年度用として使用。
- Web公開用ファイルにデータ同期するも、整合性については曖昧な部分があった。(Web公開しているテータが最も正しいデータとしていた。)
- Web公開する構造式の画像を手動でリサイズしている。(一括処理の仕組みはあるが手動で実行する。)
- PDFファイルを手動で特定のフォルダに保存。
- CDMLによるWeb公開。
- システムはMac OS 9を使用
ソリューションの開発
FileMaker Server 9を使ったクライアント/サーバー環境を基本とし、システムはMac OS X Server 10.4になり、ハードウェアはPower Mac G4からXserveとし堅牢なシステムを構築。Web公開の部分はFileMaker純正のPHP APIを採用し、DNSサーバのリプレースなども行う。
FileMakerが標準で備えるオブジェクトフィールドでは画像やPDFといった大量のバイナリーファイルの管理、およびこれらファイルのWeb公開といった処理をスムーズにこなすのは難しい。
そこでFileMakerのアドオンソフトである スーパーコンテナー で管理するように構築。スーパーコンテナーは一種のWebサーバーとして動作し、FileMaker 8.5で搭載された「Web ビューア」を利用して、Web ビューアに画像ファイルをドラッグ&ドロップするとファイルはスーパーコンテナーサーバーにアップロードされる。使い勝手はオブジェクトフィールドと何ら変わらない。
スーパーコンテナーサーバーにアップロードされた画像はサムネイルが自動生成されるので、オブジェクトフィールドの画像をWeb公開時より、表示スピードが飛躍的に向上し、サーバの負荷も軽減できる。
投稿論文を受け付けてから、論文審査の依頼・編集、Webの公開・出版、購読者の管理、請求書の発行までを一括してFileMaker上で処理できるシステムにできあがった。
メディア掲載
- 第3回 FileMaker Day(銀座)にて事例紹介されました。
- 「FileMaker 実践活用事例」として MACPOWER 2009 Vol.2に掲載されました。